手紙の書き方・送り方ガイド
手紙には、ビジネスシーンで使われるフォーマルなものから、個人間でやりとりするカジュアルなものまで様々なものがあります。
ここでは主にフォーマル、またはセミフォーマルなシーンで使われる「挨拶状」「礼状」「案内状」についての書き方や送り方のマナーをご紹介します。
挨拶状
年賀状や暑中見舞いなどの季節の挨拶や、移転や昇進といった変化に伴う挨拶
礼状
贈り物をいただいたときや招待したパーティーに参加していただいたことなどへのお礼
案内状
パーティーへの招待や、催し物の開催日程などを知らせるもの
基本の書き方
フォーマル、あるいはセミフォーマルな用途で使われる手紙(挨拶状・礼状・案内状)には、定型となる「手紙の基本構成」があります。その構成に則って書くのが、正式なマナーとなります。
近年では案内や挨拶、お礼などをメールで行うことも多いでしょう。メールの場合でも「手紙の基本構成」の内容を参考にして、礼儀正しく簡潔な文面を心がけましょう。
手紙の基本構成
手紙は4つの構成で成り立っています。この4つを順序通りに漏れなく書くことが基本となります。
①前文
冒頭の挨拶に当たる部分です。「拝啓」などの頭語から始まり、時候の挨拶を書きます。
②主文
手紙の用件に当たる部分です。「さて」「ところで」などの起こし言葉に続けて、相手に伝えたい内容を書きます。
③末文
締めくくりの挨拶で、用件についてのまとめや相手の健康を願う言葉などを書き、結語で終わります。
④後付
いつ誰から誰に送った手紙であるかを記す部分で、日付、差出人の署名、宛名を書きます。
※別記:結婚式やパーティーなどへの案内状の場合は、4つの基本構成の後に「記」として、日時や場所(住所や地図、電話番号など)を分かりやすく明記します。例えば駐車場の有無など、来場するときの注意点等を書き添えると、より親切なご案内となります。
▼ 続きを読む「前文」の書き方のポイント
「頭語」と「結語」はセットで書く
前文の一部で、手紙の冒頭に書く「頭語(とうご)」は、相手に対して敬意を表わす表現です。一般的によく使われる「拝啓」などがそれに当たります。この頭語は、末文の締めくくりに書く「結語(けつご)」とセットで書くのが基本的なルールで、例えば、頭語が「拝啓」であれば、結語は「敬具」のように、組み合わせの決まりがあります。正しい知識に基づいて書きましょう。
▼ 続きを読む頭語と結語の組み合わせ
頭 語 | 結 語 | |
---|---|---|
一般的な手紙 | 拝啓、拝呈、啓上 | 敬具、敬白、拝具 |
(女性のみ)一筆申し上げます | (女性のみ)かしこ | |
より丁寧な手紙 | 謹啓、恭啓、謹呈、粛啓 | 敬具、謹言、謹白、頓首 |
前文を省略する手紙 | 前略、冠省、略啓 | 早々、草々、匆々 |
急ぎの手紙 | 急呈、急啓、急白 | 早々、草々、匆々 |
返事をもらう前に重ねて出す手紙 | 再啓、再呈、追啓 | 敬白、拝具 |
返信 | 拝復、復啓、拝誦 | 拝答、謹答、敬答 |
◎お見舞いやお悔みの手紙の場合、頭語と結語は省略します。
◎目上の人に対して、返事を待たずに手紙を重ねて出すのは、内容によっては催促になるため失礼に当たります。控えるほうが良いでしょう。
◎正式な文書やお礼状・詫び状などの場合、「前略」などの前文を省略する書き方はNGです。
時候の挨拶
前文の一部で、頭語の後に書くのが「時候の挨拶」です。ここには手紙を送るときの季節に伴う生活環境や、社会情勢からの心情などを表現します。例えば、手紙を送る相手方が海外に住んでいる場合などは、時候の挨拶に配慮が必要になりますが、特段の事情がなければ、一般的な季節の表現を用いるのが良いでしょう。
▼ 続きを読む時候の挨拶
1月 正月/睦月 |
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---|---|
季語(~の候) | 新春 初春 賀正 新年 頌春 迎春 年頭 寒風 厳冬 厳寒 酷寒 真冬 中冬 |
例文 | 新春の候 いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます |
ポイント | 「新春/新年/初春/迎春」は元日から7日、または松の内15日までの間のみ使われます |
2月 如月 |
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季語(~の候) | 立春 節分 晩冬 残冬 残雪 春寒 余寒 雪解け 雪消月 初春月 初花月 |
例文 | 立春の候 寒さまだまだ続くなか、皆様いかがお過ごしでしょうか |
ポイント | 暦の上の春は、立春(2月4日頃)から立夏(5月6日頃)の前日までとされています |
3月 弥生/花見月 |
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季語(~の候) | 桜月 早春 浅春 春暖 春雨 春色 水温む |
例文 | 水温む候 貴社ご繁栄のことと心よりお慶び申し上げます |
4月 卯月/卯花月 |
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季語(~の候) | 陽春 春色 春暖 春陽 花信 春光 春風 桜 花見 春和 麗春 鳥来月 |
例文 | 陽春の候 皆様には益々ご活躍のことと拝察申し上げます |
5月 皐月/佐月 |
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季語(~の候) | 初夏 暮春 晩春 向暑 新緑 惜春 風薫る 初鰹 八十八夜 緑風 軽暑 五月晴 |
例文 | 初夏の候 ますますご清栄の趣お喜び申し上げます |
6月 水無月 |
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季語(~の候) | 立夏 初夏 梅雨 入梅 立夏 長雨 小夏 さみだれ 薄暑 時候不順な折りから |
例文 | 立夏の候 梅雨の折から梅雨冷えの寒い日が続き、皆様いかがお過ごしでしょうか |
7月 文月/七夜月 |
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季語(~の候) | 盛夏 炎暑 酷暑 猛暑 夏空 炎熱 暑さ厳しく 大暑 朝露 |
例文 | 盛夏の候 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます |
8月 葉月/桂月 |
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季語(~の候) | 残暑 晩暑 立秋 秋暑 新涼 残炎 残夏 |
例文 | 秋暑の候 虫の声に秋の訪を感じる季節となり、ご清栄の趣お喜び申し上げます |
ポイント | 暑くても秋の言葉を入れるなど、季節の変化で相手を思いやる挨拶もよいでしょう |
9月 長月/寝覚月 |
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季語(~の候) | 初秋 涼秋 新秋 秋気 秋色 秋冷 爽秋 秋の夜 燈火親しむ好季(となり) |
例文 | 燈火親しむ好季となり、皆様いかがお過ごしでしょうか |
10月 神無月/時雨月 |
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季語(~の候) | 仲秋 秋冷 秋涼 錦秋 紅葉 清秋、菊香薫る候 |
例文 | 菊香薫る候 皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます |
11月 霜月/菊月 |
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季語(~の候) | 晩秋 暮秋 季秋 向寒 霜寒 初霜 冷雨 落葉 雪待月 霜降月 |
例文 | 晩秋の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます |
12月 師走/極月 |
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季語(~の候) | 初冬 寒冷 忙月 寒気 極月 歳末 歳末 年の瀬 木枯らし 短日 |
例文 | 初冬の候 皆様におかれましてはご健勝のこととお喜び申し上げます |
◎季節にとらわれない文面にしたいときは、時候の挨拶の代わりに「時下(じか)」という言葉を使っても良いでしょう。時下とは「ただ今・現在・この頃」という意味です。
(例)
拝啓 時下いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます
平素は暖かいお引き立てを頂き、厚くお礼申し上げます
「主文」の書き方のポイント
用件は「結論」から書く
主文は、前文の時候の挨拶の定型文の後、改行して「さて」「つきましては」「ところで」などの言葉に続けて、手紙の用件を書きます。
まず最初に用件の「結論」に当たる部分を端的に書き、その後にその結論に至った「概要」を書くようにすると、相手にわかりやすく用件を伝えられます。
相手の状況や心境に配慮する
相手が病気のときや、災害に遭ったときのお見舞いの手紙、訃報に接したときのお悔みの手紙といったものは特に、相手への気遣いが大切です。プレッシャーを与えるような言葉は避け、より丁寧な言葉を選ぶようにしましょう。
また、お見舞い・お悔みの手紙は「前文(時候の挨拶など)」は省略し、主文(本題)から書き出すのが一般的です。
病気見舞いのNGポイント |
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◎「早くよくなってね」のようなプレッシャーを与える言葉を使う。 ◎症状について、詳しく聞く。 ◎忌み言葉(死や苦しみを連想させるもの)を使う。 |
災害見舞いのNGポイント |
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◎こちらの近況を書く。 ◎被害状況を詳しく聞く。 |
はがきと封書の使い分け
はがきは内容が誰にでも見えてしまうので、内容が見えない封書に比べると「略式」という位置づけになります。下記のような使い分けが一般的です。
▼ 続きを読むはがきを使うもの |
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◎暑中見舞いなどの季節の挨拶状 ◎事務的な連絡通知 ◎親しい人たちへの案内状や礼状 |
封書が相応しいもの |
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◎冠婚葬祭に関する招待状や案内状 ◎お世話になった方や目上の人への手紙 ◎非礼をした場合のお詫び状 ◎講演依頼といった相手に何かを頼む内容の手紙 |
封筒の書き方
封筒にはいろいろな種類がありますが、フォーマルな手紙には、白い二重封筒を使うのがマナーとされます。ただし弔事には「不幸が重なる」という意味から、二重封筒は使わないのがルールなので注意しましょう。
▼ 続きを読む切手の貼り方
縦書きの和封筒の場合は「封筒の左上」に、横書きの洋封筒の場合は「封筒の右上」に貼ります。切手は1枚にするほうが体裁としては好ましいですが、複数枚になる場合は、横に並べて貼ります。
住所と宛名
縦書きの場合、住所は郵便番号の右4桁の範囲内に書き、宛名は中央、郵便番号の左3桁の下くらいに位置に大きめの文字で書きます。
横書きの場合、住所は封筒の上1/3くらいの位置に書き、宛名は中央に大きめの文字で書きます。
ビジネスレターの宛名は、社名と支店名や部署名を記入し、役職と氏名を書きます。
封じ目
封筒には必ず封じ目を書きます。これはしっかり封をしたという印であり、途中で誰かに開封されていないという証で、宛名の本人にきちんと開封してもらう目的で書くものです。
封筒裏の中央の綴じ目に、「〆」「封」「緘」などと書くのが一般的でなマナーです。結婚式の招待状などおめでたい手紙の場合は、「寿」と書くこともあります。
往復はがきの書き方
往復はがきを送るときのポイント
往復はがきは、イベントなどの開催を知らせて出欠確認を行うといった、返信をもらうことを目的として使用するものです。往信には、イベントの目的・日時・場所・会費・連絡責任者名・電話番号といった開催概要を明確に記すことが大切で、返信の締め切り期限も記載しておくとよいでしょう。
返信用の表には、必ず返送先の郵便番号・住所・氏名(または会の名称など)を書き、 氏名(会の名称)の下の左寄りに、敬称の代わり「行」または「宛」の字を やや小さめに書き添えます。
返信用の裏面には、返信する人の手間がなるべくかからないように、出欠の回答や氏名・住所を記入する欄を設けておくとよいでしょう。記載する項目には、御出席・御欠席・御住所・御芳名など、敬語を使用するのがマナーです。
往復はがきの
返事を出すときのポイント
返信を出す場合は、まず表の宛名の下の「行」や「宛」の字に2本線を引いて消し、個人名ならば「様」、会社や団体名ならば「御中」と書きます。
裏面に記載されている、御出席・御欠席・御住所・御芳名などの「御」や「芳」などの敬語は、線を引いて消すのが一般的なマナーです。 また、たとえば出席の場合、「御」を消すだけでなく、「出席」の後に続けて「出席いたします」と書き添えたり、 「この度はお誘いいただきまして、ありがとうございます」など、主催者への何か一言書き添えると、一層心のこもった返信になります。欠席の場合も同様に、欠席理由やお詫びを一言添えるのが礼儀で、そうすることによって相手にお詫びの気持ちが伝わります。
返信は締め切り日に間に合うように送ることはもちろんですが、締め切りまで余裕があっても早めに出すと、先方の段取りに迷惑をかけない心遣いとなります。
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