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キリスト教葬儀・告別式(きりすときょうそうぎ・こくべつしき)

出典:IBC冠婚葬祭辞典

キリスト教の葬儀・告別式は、カトリック(注1)では「葬儀ミサ」、プロテスタント(注2)では「葬式」(注2)と呼ばれます。カトリックとプロテスタントの宗派の違いでその儀式の内容も異なります。 カトリックでは死は終わりではなく始まりであるため、葬儀は神に故人の罪を謝罪し許しを請い、永遠の命を授かるように祈る儀式です。プロテスタントでは、神に感謝し遺族を慰め、友人知人への告別をする儀式とされています。また、全ての人に終わりがあるとの考え方から、いずれ来る終わりに向けた備えを促す機会でもあると言われています。 葬儀は教会で行うのが基本ですが、セレモニーホールや自宅で行うこともあります。

日付や時期

臨終に際してカトリックでは、逝去する前に神父が罪の赦しと祝福へのための儀式である「終油の秘蹟(塗油式)」を行います。逝去すると故人の胸の上に手を組み、そこに十字架とロザリオを置きます。
プロテスタントでは、逝去後に牧師がパンと葡萄酒を信者に与える「聖餐式(せいさんしき)」を行うこともあります。
キリスト教の葬儀・告別式は、「通夜式」、「通夜のつどい」に当たる前夜式の翌日に行われます。通夜や葬儀は、いつまでに行わなくていけないという決まりがあるわけではありません。遺族や教会の司式の状況を確認して、日程を調整する必要があります。

【日本の死亡に関する手続き】
まだ医療技術が発達していない時代、死亡診断後に蘇生するケースがあったため、日本には、死亡診断から火葬までに24時間以上あけることを義務付けた法律があります。
「死亡診断書」が発行されて初めて法的に死亡が認められるため、人が亡くなった際には法律上この書面が必ず必要となります。死亡届を書いたら、死亡の事実を知った日を含めて7日以内に、故人の本籍地または死亡地、届出人の現住所地のいずれかの役所に提出します。届け出が受理されると「火葬許可証」が発行され、その許可証をもって火葬が行われます。

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行事や風習・慣習、季節に関する事項

カトリックとプロテスタントでは式の内容が異なります。また教会によっても異なる場合があります。葬儀は故人が所属していた教会で行われることがほとんどで、葬儀と告別式は別々で行うこともあります。

【カトリックの葬儀】
カトリックでは聖職者のことを神父と呼びます。また、礼拝の歌は聖歌です。
1.入堂聖歌
聖歌と共に神父が入堂します。この際、参列者は起立で迎えましょう。棺は一旦入り口で安置され、神父によって聖水と祈りが捧げられます。その後神父に続き、棺と遺族の入場となります。
2.開式の辞
神父が棺に聖水を注ぎ、献香します。その後、開式の辞を述べ、葬儀の開祭を告げます。
3.葬儀のミサ
「言葉の祭儀」と「感謝の典礼」が行われます。言葉の祭儀では、神父による聖書の朗読と説教が行われ、参列者全員で祈りを捧げます。感謝の典礼では、遺族が祭壇にパンとぶどう酒を捧げ、信徒が神父から聖体(パン)を受け取る儀式です。これは「聖体拝領」というもので、故人が復活の神秘にあずかり、永遠の命を得るように祈るという意味があります。

葬儀には「葬儀ミサ」によるものと、故人が信者ではない場合や参列者のほとんどが信者ではないなどの事情によってミサが行えないときには。「葬儀ミサ」から「感謝の典礼」を除いた「ことばの祭儀」と言われる儀式が行われます。

【カソリックの告別式】
1.入堂聖歌
葬儀の場合に同じ
2.聖歌斉唱
参列者全員で聖歌を歌います。これにより告別式の開式となります。
3.弔辞・弔電紹介
故人の略歴及び弔辞・弔電が紹介されます。
4.献花
献花を行う順番は、喪主、遺族、親族、一般会葬者となります。
5.遺族挨拶
喪主が感謝の挨拶を行います。参列者が多い場合には、献花の前に行うこともあります。

【プロテスタントの葬儀・告別式】
プロテスタントの考えでは、故人は神の下で安らかになるという思想があるため、神への祈りが捧げられます。そのため、葬儀も神への感謝と遺族を慰めるという意味合いがあります。カトリックとは違い、葬儀と告別式は分けずに一緒に行われる場合もあります。
プロテスタントでは聖職者は牧師です。また、礼拝の歌は讃美歌や聖歌です。
1.入場
オルガン演奏の中、牧師を筆頭にして棺、喪主、遺族が入場します。参列者はそれを起立で出迎えます。
2.聖書朗読・祈祷
牧師が聖書を朗読して祈祷を捧げるので、参列者は黙祷します。その後、賛美歌を斉唱します。
3.牧師による説教
まず牧師が故人の略歴や人柄などを紹介し、その後、説教が行われます。
4.弔辞・弔電紹介
弔辞・弔電は故人の弔いというよりも、思い出を語るような内容が一般的です。
5.祈祷・オルガン奏楽
オルガンの演奏を聞きながら黙祷します。
6.告別の祈り・献花
牧師が祈りを捧げ、全員で賛美歌を斉唱します。その後、牧師、喪主、遺族、親族、一般会葬者の順番で献花を行います。
7.遺族挨拶
遺族の挨拶は献花前に行われることもあります。                                               8.出棺

キリスト教では仏式の焼香の代わりに、献花をするのが一般的です。
【一般的な献花のやり方】
まず花を両手で受け取ります。その後、左手で茎を持ち、右手で花を支えるようにして、祭壇の前に進みます。献花台の前に来たら花を90度右方向に回し、茎を祭壇の方に向けて、献花台に置きます。献花の後祈りますが、信者でない場合は祭壇に向かい、深く一礼すればよいでしょう。

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お金に関する事項

キリスト教にも仏式、神式のような「香典」という考え方があります。
キリスト教の葬儀に参列する際は、献花に対する志として「御花料」を渡す場合があります。
御花料の金額は故人との関係性によって異なります。両親が5万円から10万円、兄弟姉妹は3万円から5万円、その他の親族は1万円から3万円、職場の関係者や友人知人は3,000円から1万円が目安だと言われています。

【葬儀費用】
必要な予算を葬儀社に問い合わせる際はは、主に下記の項目が含まれていることを確認し、含まれていない場合の追加費用についても確認するといいでしょう。
1.式場利用料(親族控え室なども考慮)
2.祭壇、お棺、骨壷などの物品費用
3.遺体の保管、搬送、火葬費用
4.返礼品や飲食費用など
5.教会への献金・オルガン奏者などへの謝礼

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返礼やお返しについて

キリスト教の場合、基本的には御花料に対する返礼の習慣があり、日本では返礼品として葬儀の約1カ月後に、「志」などの表書をした品物に挨拶状を添えて贈ることがあります。仏式と同じく、菓子・お茶などの食品や、タオル・石けんなどの消耗品が良く選ばれています。
贈る時期は、プロテスタントでは1ヶ月後の「召天記念日」の後、カトリックでは30日目の「追悼ミサ」の後です。
返礼品の掛紙の水引は黒白または黄白(関西)の「結切」で、表書の上段は薄墨で「志」とします。水引下段は喪主の姓のみ、またはフルネームを名入するのが一般的です。

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のし紙・掛紙の水引や表書について

キリスト教の弔事でお金を包む場合、ユリの花や十字架が描かれたお金包みか白無地の封筒を使用します。上段に表書、下段に氏名(あるいは連名)を書きます。水引は不要です。
カトリック、プロテスタントそれぞれに、お金を渡す相手によって表書が違います。

【カトリックの弔事の表書】
喪主への志としてお金を包む場合:「御花料」
教会への謝礼としてお金を包む場合:「御ミサ料」
神父へのお礼としてお金を包む場合:教会の儀式なら「御礼」、自宅に来ていただいた場合は「御車代」

【プロテスタントの弔事の表書】
喪主への志としてお金を包む場合:「御花料」
教会への謝礼としてお金を包む場合:「記念献金」
牧師へのお礼としてお金を包む場合:教会の儀式なら「御礼」、自宅に来ていただいた場合は「御車代」

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服装やマナーなど

遺族の服装は、お通夜・葬儀、その後の一周忌の法要に至るまで、原則として喪服を着用します。男性は、ブラックスーツ(シングル、ダブル両方可)に礼装用の白いワイシャツ、無地の黒ネクタイ、タイピンやポケットチーフは着けません。女性は、黒いワンピースかフォーマルスーツ(原則として長袖)にします。急の案内で喪服が用意できていないときは、スーツや仕事着でも大丈夫だとされています。
靴やカバンも黒色で、光沢のないものを選びます。
女性の靴は、つま先が丸いプレーントゥや少し角ばったスクエアトゥが基本で、ヒールは3~5cm程度で、ハイヒールやブーツなどは避けるようにします。女性が宝石を身に着ける際は「涙」を表す宝石とされ、真珠や黒真珠は問題ないとされています。

遺族以外の参列者は、逝去後に行われる一周忌までは、原則として喪服を着用しますが、三周忌から後の法要では、比較的地味な服装であれば平服でも問題ないとされています。

信仰を持った方のキリスト教での死は「永遠の命を得て天国で新しい人生が始まる節目」を意味します。決して不幸なものではないと捉えられているため、お悔やみの言葉はキリスト教の考えにそぐいません。遺族などに挨拶する際にはお悔やみは言わず、「この度はお知らせいただき、おそれいります」「安らかに眠られますようにお祈りいたします」といった言葉をかけるのが一般的です。

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脚注

(注1)カトリック:ローマ教皇を最高指導者として全世界に12億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派。
(注2)プロテスタント:16世紀の宗教改革運動の後、カトリック教会から分離して成立したキリスト教の教派。特に福音主義を理念としている。

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