冠婚葬祭
新築祝い(しんちくいわい)
出典:IBC冠婚葬祭辞典
新築祝いとは、親族・親戚や友人、知人が、新しく家を建てた時に行うお祝いを言います。
日付や時期
新築祝いは入居してから1ヶ月~2ヶ月の間に贈るのが良いとされています。またお祝いの返礼としての「自宅のお披露目」も、入居してから1ヶ月~2ヶ月後がおすすめです。
▼ 続きを読む由来・起源・制定
建物を建てる前に行う「地鎮祭(じちんさい)」の起源は古く、持統天皇(注1)の時代、西暦691年には既にこの祭りの記録があり、日本書紀(注2)に、三人の使者を使わせて伊勢の神宮の地鎮祭を行なったとあります。古代より土木・建築等に伴う重要な祭りとして行われてきたと言われています。
「上棟式(じょうとうしき)」の歴史も古く、起源は縄文時代と言われています。当時の家屋の屋根に付けられていたニワトリの飾りが、神にニワトリを捧げていた時代の名残であり、上棟に際して何らかの儀式を行っていたことを指していると考えられています。その後平安時代には、上棟式の形式が確立したと言われています。
行事や風習・慣習、季節に関する事項
【家を建てる前に行う慣習や行事】
地鎮祭
この行事は、土木工事を行う際や建物を建てる際に、「工事中の安全」と「建築物が何事もなく永くその場所に建っていられること」を願う儀式のことです。「じちんさい」と読むほか「とこしづめのまつり」と読むこともあります。「鎮」の字にしずめる、落ち着かせるといった意味があります。工事の着工にあたり、神社から神職(注3)をお招きして神様にお供え物をし、祝詞(のりと)(注4)をあげ、お祓いをして浄め、最初の鍬(くわ)や鋤(すき)を入れ、工事の無事を祈ります。建築予定地が更地になった状態の基礎工事の前、全ての工事に先立って行います。
ご近所への挨拶は、地鎮祭を終えた直後に行います。新築工事では、騒音や振動が伴います。そのため、それらの迷惑を掛けてしまうことに対するお詫びや今後の挨拶を近隣住民の方たちへ行います。工事前の挨拶回りは基本的には施工会社が行いますが、近隣住民の方たちと長くお付き合いをしていくのは「施主」ですので、施工会社と一緒に伺うと良いと思います。手頃なタオルやお菓子などを持参します。
上棟式
木造建築で家を建てる場合、柱や梁を組み立てた後、屋根の一番高い位置に棟木(むなぎ)という横架材が取り付けられることを上棟や棟上げと言います。上棟式は無事建物が完成することを願い、上棟できたことを工事関係者と一緒にお祝いする式典で、棟上げのタイミングで行い、上棟後の縁起の良い日に行うのが一般的です。 地域によって、上棟が無事終わったら、上棟までの工事が無事に終わったことをお祝いする「餅まき」という行事があります。「餅投げ」とも呼ばれています。
【新居に入居した際に行う慣習や行事】
挨拶回り
新居に入居したら、ご近所に挨拶回りを行います。工事前に一度済ませた場合でも、もう一度行うと良いでしょう。丁寧な印象を与えられるほか、ご近所の方たちとの関係性が良い影響を与えられると思います。この時にも手頃なタオルやお菓子などを持参すると良いかもしれません。
竣工式(しゅんこうしき)
建物の工事が無事に完了したことへの感謝をし、そこに住む家族の末永い繁栄を祈願する式典です。法人の大きな建造物の竣工式とは異なり、個人宅の場合は儀式は行わず、施主が工事関係者を新居に招いて、感謝と労いの気持ちを伝えるため料理を振る舞うことが多いようです。
新居披露
新居への引っ越しが終わり、落ち着いたら、両親や親戚、親しい友人などを招いて「新居披露」を行います。新築の住まいを披露することが目的なため、家具や調度品などが整ったら早めに開催するのが良いとされています。返礼、内祝いの意味を込めて、食事をふるまったりします。
贈答品などについて
新築祝いの贈り物は、シャンパン(スパークリングワイン)、ワイン、食器、観葉植物、バス用品、キッチン家電、時計などが人気です。
贈り物のタブー(禁忌)は、火に関連する機器や物です。ライターやストーブなどの暖房器具は贈ってはいけないとされています。
お金に関する事項
贈り物の金額の目安は、贈る相手との関係性によって異なります。基本的には相手との関係性が近いほど金額の目安が上がっていくのが一般的です。友人や職場関係の人に贈る場合の目安は5,000円~1万円前後と言われています。兄弟・親戚は1万円~3万円が目安です。お祝い金は新札を用意します。
「地鎮祭」の準備は通常施工会社が行いますが、祈祷していただく神職に「初穂料」を納めます。初穂料の目安は一般的に2万円~5万円程度と言われていますが、5万円~7万円としているところもあります。参加する人数や儀式の規模、地域によっても異なるため、事前に施工会社へ確認と相談をしたほうがよいでしょう。祈祷を依頼する神社に直接問い合わせても構いません。
返礼やお返しについて
新築祝いをもらったときは、お返しの代わりとして、新居に招いて「お披露目会」を開催するのがマナーと言われています。
しかし、中には遠方に住んでいたり高齢だったりして、自宅にお誘いするとかえって相手の負担になってしまうような場合は、品物でお返しをしても構いません。タオル、コーヒーや紅茶、お菓子、お酒、アロマグッズや入浴剤、旅行や宿泊、食事などの体験ギフトなどが人気です。
他の内祝いと同様に、いただいた品やお金の1/3〜半額(半返し)が目安だと言われています。 ただし、高額のお祝いをいただいた場合や品物の金額が分からない場合は、目安に拘らなくても良いとされています。お返しには器が喜ばれます。家と言うウツワができたので、一緒に喜んでいただく意味があります。
のし紙・掛紙の水引や表書について
お祝いの品やお金につける水引は赤白の「花結」で、表書は「御新築御祝」「祝御新築」などと記します。水引下段に氏名を書きます、職場の上司に贈る場合など、「部下一同」という形の連名で送るのも珍しくありません。結婚に伴う引越しの場合は、表書を「寿」とする場合もあります。マンションを購入した場合は「新居御祝」とします。
お返しの品物には、赤白の「花結」の水引に、のしがついた掛紙を使います。表書は「新築内祝」「内祝」などとします。
地鎮祭の御祈祷料を包むのし袋の水引は赤白の「花結」で、表書に「初穂料」あるいは「玉串料」などと書きます。単に「御礼」でも構いません。水引下段には、施主の氏名を記載します。
服装やマナーなど
地鎮祭では、施主や家族の服装に特に決まりはありませんが、お祝いの儀式ということで、フォーマルな服装でのぞむ人が多いようです。 男性の場合はスーツやジャケットを着て、ネクタイを締めた程度が一般的です。
▼ 続きを読むその他の事項(宗教に関する事など)
地鎮祭は、その土地の氏神(うじがみ)様(注5)を祀っている神社が執り行うのが一般的です。
脚注
(注1)持統天皇:日本の第41代天皇で、皇室史上3人目の女性天皇。在位は690年2月14日~697年8月22日。第40代・天武天皇の皇后。
(注2)日本書記:奈良時代に成立した日本の歴史書。
(注3)神職:神社に仕える者。神主。
(注4)祝詞:神道の祭祀において神に対して唱える古体のことば。
(注5)氏神様:血縁的な関係にあった一族の祖先の霊を神として祀ったもの(一族の祖先神あるいは守護神)。または、住む土地の鎮守。
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