日本の生活文化と礼節がよく分かる!

冠婚葬祭WEBマナー辞典


複数キーワード検索の場合は、半角スペースでキーワードを区切ってください

冠婚葬祭

ホーム > 冠婚葬祭 > 婚約・結納

婚約・結納(こんやく・ゆいのう)

出典:IBC冠婚葬祭辞典

婚約とは、結婚の約束をすることです。2人の明確な合意があれば、書面の提出やプロポーズ(注1)など特別な手続きをしていなくても、「婚約が成立している」と見なされます。日本の民法には婚約について規定が設けられていませんが、男女間の将来的な婚姻についての契約と位置づけられています。 結納とは将来的な結婚、すなわち婚約の成立を確約する意味で、品物などを取り交わす日本の習慣です。同時に婚約のための儀式及びその品物(結納品)を言うこともあります。結納は「両家の結びつきを強めるための儀式」であると同時に、「婚約を正式に発表する場」という意味合いの儀式です。結納の最も正式な形は、皇室の納采の儀です。

由来・起源・制定

結納の起源 は、1,400年前の仁徳天皇(注2)の時代にまで遡ります。『日本書記』(注3)には仁徳天皇の皇太子(後の履中天皇)が羽田矢代宿禰の娘、黒媛を妃とされた時に納采が贈られました。これが現在の結納に当たるとされています。結納の作法が整えられたのは室町時代で、小笠原家などによって行われたそうです。

▼ 続きを読む

行事や風習・慣習、季節に関する事項

結納は、金品の受け渡しを行う伝統的な婚約の儀式です。以前は仲人が仕切ることが多かったのですが、近年は仲人(注4)を立てず、結婚する2人と両家の親が出席して行うのが一般的になっています。男性側の親が結納品を持参し、口上を述べて進行します。結納を行う場所の設定や予約は、女性側の親が行います。結納を済ませた後には、両家で会食をすることが多いです。
結納をしない場合、両家の両親や近しい親族を入れて「顔合わせ食事会」をするのが一般的です。「顔合わせ食事会」の主催者には決まりはありませんが、2人が両家の両親を招くことが多いです。参加者にも決まりはなく、2人の兄弟姉妹やその子供なども参加することがあります。場所はホテルや老舗の料亭名などで行われることが多いようです。

▼ 続きを読む

贈答品などについて

結納を行う際は、男性側は贈る物をきちんと揃えて、女性とご家族に対して誠意を表さなくてはなりません。
結納品は、関東関西とも9品目とされます。品数や品目は地域差があるので、事前に両家で相談をすることをお勧めします。

関東の結納品(9品目)
・目録(もくろく):結納品を書いたリスト
・家内喜多留(やなぎだる):食事やお酒の代金。昔は「たくさんの福があるように」という願いを込めて、柳の木でできた酒樽や一升瓶を贈っていましたが、最近は現金を包むようになっています。
・末広(すえひろ):白い扇子。「末広がりに繁栄するように」という願いを込めたもの。
・友白髪(ともしらが):白い麻ひも(糸)。「ともに白髪になるまで長生きできるように」という願いを込めたもの。
・子有婦・子生婦(こんぶ):昆布。「子宝に恵まれるように」という願いを込めたもの。
・寿留女(するめ):スルメ。「幾久しく」という願いを込めたもの。
・勝男武士(かつおぶし):鰹節。その昔、武家では保存食(非常食)として鰹節が常備されていたことに由来して、「武運長久の縁起物」の意味を込めたもの。
・金宝包(きんぽうづつみ):結納金。昔は男性側から女性側に小袖を贈っていたことから、「小袖料」「御帯料(おんおびりょう)」とも言われます。また、女性側から男性側に贈る際は「御袴料」となります。
・長熨斗(ながのし):アワビを伸ばしたもの。昔から貴重な食材であったアワビは、不老長寿(注5)を象徴する最高級の贈答品とされてきました。

関西の結納品(9品目)
・家内喜多留(やなぎだる):酒料、酒代
・松魚料(まつうおりょう・しょうぎょりょう):食事代。昔は魚を贈っていたため、このように呼ばれています。関東式の「勝男武士」に当たります。
・寿恵廣・末広(すえひろ):白い扇子。関東と同じ。
・高砂(たかさご):白髪の老夫婦人形。尉(じょう)と姥(うば)の人形で、「白髪になるまで夫婦仲良く」という願いを込めたもの。
・子有婦・子生婦(こんぶ):昆布。関東と同じ。
・寿留女(するめ):スルメ。関東と同じ。
・小袖料(こそでりょう):結納金。関東式の「金宝包」に当たります。地域によって「御帯料(おんおびりょう)」と言われることもあります。
・結美和(ゆびわ):婚約指輪のことで、縁起の良い漢字を当てて、このように表記されます。
・熨斗(のし):アワビを伸ばしたもの。関東の「長熨斗」と同じ。

婚約の記念品としては、婚約指輪を選ぶ人がほとんどです。そのほか稀に、時計、ネックレス、ピアス・イヤリングなどを贈る男性もいます。

▼ 続きを読む

お金に関する事項

結納金の全国平均は約95万円ですが、一般的には50万円から150万円の間と言われています。結納金は、新札で揃えるのが一般的です。
市販の結納セットには、1万円~15万円台まで様々な種類があります。また、結納品や必要な書類、飾り付けなどすべて手配してくれる「結納パック」を取り扱っているホテルやレストラン、料亭などを利用するのも便利です。
婚約指輪の金額は「給料の3ヶ月分」と言われた時代もありましたが、2020年に行われた結婚雑誌の調査によりますと、30万~40万円未満 29.5%、20万~30万円未満 21.8%、40万~50万円未満 13.1%となっています。

▼ 続きを読む

返礼やお返しについて

結納品を受け取った女性側は、「結納返し」といって半額程度のお返しをするのが一般的です。結納返しの仕方には次のような方法があります。
・結納金の半額を現金で返す
・半額を目安にした腕時計や品物を贈る
・現金と品物の両方で半返しの金額に調整する

▼ 続きを読む

のし紙・掛紙の水引や表書について

結納金を包む際の表書は「御袴料」等の名目、または「寿」で、名入は姓のみで構いません、
結納品を用意する場合、1品ずつ購入するのではなく、「結納品一式」のセットを購入するのが一般的です。結納品一式の中には「のしあわび」が包まれた「長熨斗(ながのし)」が含まれていますので、結納金を包む袋などに個別に「のし」を付ける必要はなく、セットに含まれている金封をそのまま使えば問題ありません。
また、結納品に使う水引は、一度結んだらほどけにくいということから、「末永いお付き合い」をイメージさせる「あわじ結び」のものが基本です。水引の付いた結納品を包む袋も結納品一式の中に入っていますので、個別に用意する必要はありません。
結納品を用意せず結納金だけを贈る場合は、結納金を入れる金封を個別に用意する必要があります。
結納品を贈らないということは結納品一式に含まれる「長熨斗(のし)」もないので、「のし」がついた金封を選びましょう。
水引は、結納品ありの場合と同じく、結んだらほどけない「あわじ結び」のものを選びます。

▼ 続きを読む

服装やマナーなど

一般的に結納には、準礼装または略礼装で臨むことがマナーとされています。 正礼装ほど格式張ってはいないものの、ある程度は改まっている服装という意味です。 男性は黒または紺色のスーツにネクタイ、女性はワンピースやセットアップ、訪問着などです。 ただし両家で納得しているのであれば、これにこだわる必要はありません。清潔できちんとしていれば多少ラフな服装でも構いません。

▼ 続きを読む

その他の事項(宗教に関する事など)

結納には、宗教色は無いと言われています。

脚注

(注1)プロポーズ:結婚を申し込むこと。求婚。
(注2)仁徳天皇:在位 87年といわれる、日本の第16代天皇。
(注3)日本書記:奈良時代に成立した日本の歴史書。
(注4)仲人:結婚式の仲立ちをする人。
(注5)不老長寿:いつまでも年をとらず、長生きすること。
(注6)小袖:袖口を狭く仕立てた着物。
(注7)のしあわび:長寿の食べ物とされていた鮑(あわび)を薄く伸ばして乾燥させたもの。

▼ 続きを読む

贈り物の基礎知識

暮らしに役立つマナー

生活文化・しきたり百科