冠婚葬祭
キリスト教の儀式(お通夜)(きりすときょうのぎしき/おつや)
出典:IBC冠婚葬祭辞典
キリスト教では、イギリスのスコットランド地方やアイルランド地方などでは通夜にあたる儀式をウェイク「wake」といい弔問という意味で、viewingやVisitationも同じ弔問や通夜と訳されます。日本でも行う場合もあります。カトリックでは「通夜の集い」、プロテスタントでは「前夜式」と言います。
日付や時期
臨終に際してカトリックでは、神父が罪の赦しと祝福へのための儀式である「終油の秘蹟(塗油式)」を行います。逝去すると故人の胸の上に手を組み、そこに十字架とロザリオを置きます。
プロテスタントでは、まだ意識があるうちに牧師がパンと葡萄酒を信者に与えお祈りを行うこともあります。
通夜に当たる儀式は、故人が亡くなった日、または翌日、翌々日の夜に行うのが一般的ですが、いつまでに行わなくていけないという決まりがあるわけではありません。遺族や教会の司式の状況を確認して、葬儀の前夜のお通夜の日程を調整する必要があります。
【日本の死亡に関する手続き】
まだ医療技術が発達していない時代、死亡診断後に蘇生するケースがあったため、日本には、死亡診断から火葬までに24時間以上あけることを義務付けた法律があります。
「死亡診断書」が発行されて初めて法的に死亡が認められるため、人が亡くなった際には法律上この書面が必ず必要となります。死亡届を書いたら、死亡の事実を知った日を含めて7日以内に、故人の本籍地または死亡地、届出人の現住所地のいずれかの役所に提出します。届け出が受理されると「火葬許可証」が発行され、その許可証をもって火葬が行われます。この許可証は再発行が不可のため、すぐにコピーを取ることをお勧めします。
由来・起源・制定
正教会(ギリシャ正教)には、ギリシャ語の語源で「夜通しの祈り」を意味する「パニヒダ」という永眠者の為の式典があります。日本正教会では、葬式前晩のパニヒダを通夜と呼ぶことを除斥する事由には該当しないとしています。
▼ 続きを読む行事や風習・慣習、季節に関する事項
前夜式の流れは、カトリックとプロテスタントで多少の違いはありますが、聖歌や讃美歌の唱和や聖書や説教の拝聴などはどちらにもあります。
キリスト教では仏式の焼香の代わりに、献花をするのが一般的です。
【一般的な献花のやり方】
まず花を両手で受け取ります。その後、左手で茎を持ち、右手で花を支えるようにして、祭壇の前に進みます。献花台の前に来たら花を90度右方向に回し、茎を祭壇の方に向けて、献花台に置きます。献花の後祈りますが、信者でない場合は祭壇に向かい、深く一礼すればよいでしょう。
キリスト教では、仏式の「通夜振る舞い」のような食事の席はなく、牧師(神父)と身内だけで茶話会をする程度です。紅茶やコーヒーに菓子を喪家で用意し、故人の思い出を語ることに重きがおかれます。喪家によっては食事を用意するケースもみられますが、この場合、酒類を出すことは控えます。
お金に関する事項
キリスト教の前夜式は、遺族とごく近しい親族で行われます。一般的には、参列者が仏式の「香典」に当たるようなお金を遺族に渡すこともあります。
前夜式を自宅で行った場合、牧師や神父に渡すお礼の目安は5,000円~3万円程度と言われています。
のし紙・掛紙の水引や表書について
キリスト教の弔事でお金を包む場合、ユリの花や十字架が描かれたお金包みか白無地の封筒を使用します。上段に表書、下段に氏名(あるいは連名)を書きます。水引は不要です。
カトリック、プロテスタントそれぞれに、お金を渡す相手によって表書が違います。
【カトリックの弔事の表書】
喪主への志としてお金を包む場合:「御花料」
教会への謝礼としてお金を包む場合:「御ミサ料」
神父へのお礼としてお金を包む場合:教会の儀式なら「御礼」、自宅に来ていただいた場合は「御車代」
【プロテスタントの弔事の表書】
喪主への志としてお金を包む場合:「御花料」
教会への謝礼としてお金を包む場合:「記念献金」
牧師へのお礼としてお金を包む場合:教会の儀式なら「御礼」、自宅に来ていただいた場合は「御車代」
服装やマナーなど
遺族の服装は、お通夜・葬儀、その後の法要に至るまで、原則として喪服を着用します。男性は、ブラックスーツ(シングル、ダブル両方可)に礼装用の白いワイシャツ、無地の黒ネクタイ、タイピンやポケットチーフは着けません。女性は、黒いワンピースかフォーマルスーツ(原則として長袖)にします。急の案内で喪服が用意できていないときは、スーツや仕事着でも大丈夫だとされています。
靴やカバンも黒色で、光沢のないものを選びます。
女性の靴は、つま先が丸いプレーントゥや少し角ばったスクエアトゥが基本で、ヒールは3~5cm程度で、ハイヒールやブーツなどは避けるようにします。女性が宝石を身に着ける際は「涙」を表す宝石とされ、真珠や黒真珠は問題ないとされています。
遺族以外の参列者は、逝去後30日間に行われる儀式までは、原則として喪服を着用しますが、30日を過ぎた後の法要では、比較的地味な服装であれば平服でも問題ないとされています。
キリスト教での死とは、「永遠の命を得て天国で新しい人生が始まる節目」を意味しています。決して不幸なものではないと捉えられているため、お悔やみの言葉はキリスト教の考えにそぐいません。遺族などに挨拶する際にはお悔やみは言わず、「この度はお知らせいただき、おそれいります」「安らかに眠られますようにお祈りいたします」といった言葉をかけるのが一般的です。
脚注
(注1)カトリック:ローマ教皇を最高指導者として全世界に12億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派。
(注2)プロテスタント:16世紀の宗教改革運動の後、カトリック教会から分離して成立したキリスト教の教派。特に福音主義を理念としている。
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