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仏式のお通夜(ぶっしきのおつや)

出典:IBC冠婚葬祭辞典

お通夜とは、葬儀の前に故人を忍び、故人と過ごす最後の夜です。日本で最も一般的なのが仏式のお通夜です。仏式の弔事は通常2日間執り行われ、1日目がお通夜、2日目が葬儀・告別式となります。

日付や時期

お通夜は、故人が亡くなった日、または翌日、翌々日の夜に行うのが一般的ですが、いつまでに行うべきといった決まりはありません。遺族や火葬場および葬儀場の状況を確認して、お通夜の日程調整をする必要があります。
お通夜当日は夜6時~7時頃から読経を始めるのが一般的です。仕事が終わってからでも参列できるようにこの時間とされています。
六曜の友引(注2)に当たる日は「友を引く=友を一緒にあの世に連れていく」との連想から、葬儀・告別式は友引を避ける場合が多いですが、お通夜は故人を見送る場ではなく、故人の思い出に浸る場という考えから、友引でも行ってよいと考えられています。

【日本の死亡に関する手続き】
まだ医療技術が発達していない時代、死亡診断後に蘇生するケースがあったため、日本には、死亡診断から火葬までに24時間以上あけることを義務付けた法律があります。
「死亡診断書」が発行されて初めて法的に死亡が認められるため、人が亡くなった際には法律上この書面が必ず必要となります。死亡届を書いたら、死亡の事実を知った日を含めて7日以内に、故人の本籍地または死亡地、届出人の現住所地のいずれかの役所に提出します。届け出が受理されると「火葬許可証」が発行され、その許可証をもって火葬が行われます。

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由来・起源・制定

お通夜は「釈迦(注1)の死を悲しんだ弟子たちが7日間に渡り、ご遺体を見守りながら、釈迦のこれまでの説法について語り合った」と言う故事に由来すると言われています。

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行事や風習・慣習、季節に関する事項

臨終に際しては、立ち会った人が全員で「末後の水」と言われる慣習として、個人の唇を水で拭い、別れを惜しみます。「末後の水」は臨終着後に病院で行ったり、遺体の安置場所で行ったりします。
僧侶による読経の後、焼香が案内されます。焼香の時間は約30~40分程度と言われます。僧侶、喪主、遺族の順に焼香した後、その他の参列者が続きます。仏教の焼香の仕方は宗派によって異なりますが、「立礼焼香(りつれいしょうこう)」は、大体の宗派に対応できます。

【立礼焼香】
1.焼香の順番が来たら、軽く一礼して立ち上がり、僧侶と親族に一礼します。
2.焼香台の前に進み、遺影に一礼します。
3.親指と人差し指、中指で抹香をつまみ、目を伏せて抹香を目の当たりまで上げ、香炉に落とします。これを1~3回繰り返します。回数は宗派によって異なります。参列者が多い時は1回でかまいません。
4.合掌して1歩下がり、遺影に深く一礼します。さらに2、3歩下がり、僧侶と親族に一礼し、席に戻ります。

焼香の後、僧侶による10分程の法話があるのが一般的ですが、近年は省略されて焼香後、そのまま僧侶が退場するケースもあります。法話が終わると僧侶は退場し、その後に喪主が参列者に挨拶をして、「通夜振る舞い(食事)」へ案内します。「通夜振る舞い」は、参列者が故人を忍びながら軽食をともにすることを言います。食事をいただいた後は遺族に挨拶をして、再度霊前に拝礼、焼香してから退席します。

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お金に関する事項

比較的近い親戚の場合、香典の相場は1万円~2万円とされています。 血縁が近くない親戚や職場関係の人、友人・知人の香典は、5,000円~1万円が相場です。相場に関わらず、生前のお付き合いの深さで金額を考えることも多く、付き合いが深ければ金額も多めになります。「不幸ごとを用意していたようで良くない」という理由から、弔事においては新札を使わないことがマナーとされていますが、清潔なものを差し上げる意味できれいなお札を用いましょう。気になるのでしたら、お札を半分に折って広げて使っても良いです。本来はお札ではなくお金包みの折り方が違うのです。
葬儀の費用の平均は約90万円だそうです。葬儀費用の支払いは「施主」が行います。「施主」と「喪主」と同じ人が務める場合が多いですが、最近は「施主」は配偶者、「喪主」は子供が務めるなど、異なる場合があります。
斎場や火葬場などの施設利用料や僧侶へのお布施は、その場で支払う場合もあるので、事前に葬儀社などに確認しましょう。葬儀社では、葬儀(通夜を含む)一式、お寺への「お布施」「飲食代(通夜振る舞い)」などを含んだセットとしている場合もありますが、多くの場合、御布施は葬儀社の提示するセット料金には含まれていません。特に安価な場合、お布施に限らず飲食代が別である場合もありますので、事前の確認が必要です。
僧侶にお通夜やその翌日の葬儀・告別式での読経と、火葬時の炉前での読経を含むお勤めをしていただいた場合、一度の「お布施」で支払うのが一般的です。このお布施の全国平均が、およそ47万3,000円と報告されています。

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返礼やお返しについて

通夜や葬儀における返礼品(会葬返礼品)は、通夜・葬儀に参列してくれた方へお礼状を付けて渡す500円~1,000円程度、高くても2,000円程度です。返礼品は「会葬御礼品」などと呼ばれることもあります。以前は通夜と告別式でそれぞれ違う品物を用意することが多かったようですが、近年ではどちらも同じ返礼品を用意する場合が多いようです。
葬儀の当日に弔問客にお渡しするものには返礼品の他に「香典返し」がありますが、この2つは全くの別物でした。返礼品は香典をいただいていない場合でも参列してくださった弔問客全員にお渡しするのに対して、香典返しは香典をいただいた人にのみお返しをするものでした。本来の香典返しは四十九日の忌明け後に贈るものでしたが、近年では葬儀の当日にお渡しする「即返し」の習慣が一般的になっています。
香典返しはいただいた金額の1/3~半額程度の品物を贈るのが一般的ですが、返礼品は頂いた金額の多少に関わらず、一律同じ品物をお渡しするという違いがあります。しかし近年では、返礼品をもって香典返しとすることも多くなっています。用意した返礼品が香典の1/3に満たない場合は、別途、お返しを送ることもあります。
葬儀は悲しみの儀式であることから、記念品のようになりかねない返礼品や香典返しの品は、「後に残るもの」は不適当とされています。どちらもお菓子やお茶などの食品や、タオル・石けんなどの消耗品がよく選ばれています。

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のし紙・掛紙の水引や表書について

お悔みのお金の包みは、白色のシンプルな不祝儀袋を使います。水引は黒白や双銀の「結切」で、表書は、通夜から四十九日の法要までなら薄墨で「御霊前」とします。浄土真宗では、お通夜から薄墨で「御仏前」とします。「御香料」は「御霊前」と違い、仏式の場合はいつでも使えます。「御香典」も薄墨とします。水引の下に氏名、連名、法人の場合は、会社名、部署名、肩書、氏名などを薄墨で記入します。
関西地方では、不祝儀袋の水引は黄白の「結切」で、のしはなし。表書は「御香料」「御霊前」「御香典」などとし、水引下段に名入します。
返礼品や香典返しの水引は黒白または黄白(西日本)の「結切」で、表書は薄墨で「志」「満中陰志」「粗供養」などとします。
施主がお寺に支払う場合、黒白または黄白(西日本)の「結切」の水引が付いた不祝儀袋を使います。表書は薄墨または濃墨(こずみ、こい字)で「御布施」とします。水引なしの白い封筒に「御布施」、お寺さんに不幸があった訳でないので、薄墨でなくても良いです。薄墨で書くのは、突然の死でびっくりしたため、よく墨も擦れないうちに書いていましたという意味があり、参列者が使用します。
表書は手書きで丁寧に書くのが基本ですが、印字する場合は楷書体や教科書体が一般的です。

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服装やマナーなど

お通夜や葬儀・告別式に参列する時は、原則として喪服が基本です。男性は、ブラックスーツ(シングル、ダブル両方可)に礼装用の白いワイシャツ、無地の黒ネクタイ、タイピンやポケットチーフは着けません。女性は、黒いワンピースかフォーマルスーツ(原則として長袖)にします。急の案内で喪服が用意できていないときは、スーツや仕事着でも大丈夫だとされています。
靴やカバンも黒色で光沢のないものを選びます。
女性の靴は、つま先が丸いプレーントゥや少し角ばったスクエアトゥが基本で、ヒールは3~5cm程度で、ハイヒールやブーツなどは避けるようにします。女性が宝石を身に着ける際は「涙」を表す宝石とされ、真珠や黒真珠は問題ないとされています。男女問わず、数珠を持参します。
受付では、お悔やみの言葉を伝えてから名簿に記帳し、香典を渡します。お悔やみの言葉は「心よりお悔やみ申し上げます」「この度はご愁傷様でございます」などです。香典は正式には袱紗(ふくさ)(注3)に包んで持参しますが、袱紗がなければ地味な小型の風呂敷か、白いハンカチに包んで持参します。
「通夜振る舞い」に誘われたら快く受けて、箸を付けるのが礼儀です。時間は比較的短いことが多く、30分から長くても1時間で退席します。
お通夜と葬儀・告別式の両方に参列する場合、香典はお通夜で渡し、葬儀・告別式は記帳のみ行います。

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脚注

(注1)釈迦:実在した仏陀(悟りに達した人)であり、仏教の開祖。
(注2)六曜の友引:六曜とは、毎日の吉凶(縁起の良し悪し)を占う考え方で、先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の順番で6種類の「曜」がある。友引は本来は「朝晩は吉、昼は凶」で相引で勝負無しという日を意味するが、「凶事に友を引く」という意味が一般的で、葬儀に不向きな日とされる。
(注3)ふくさ:進物(物、お金など)を包む布のこと。絹、縮緬などで一重または表裏二重に作り、無地や吉祥柄などの刺繍を施したものなどがある。

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